絵本を読む“ねらい”を決めると、選び方が変わる
絵本を手に取るとき、表紙のかわいさや人気ランキングに目がいきがちです。
けれど、「どんな時間にしたいか」「子どもに何を感じてほしいか」というねらいを決めておくと、選ぶ基準がはっきりしてきます。
ねらいを意識すると、選ぶ絵本の世界や伝えたいメッセージも自然と変わっていきます。
ここでは読む目的を整理して、家庭にぴったりの絵本を見つけるための考え方を紹介します。
安心や共感を生む絵本を選ぶ
子どもが「このお話わかる」「この気持ち知ってる」と感じられる瞬間。
それが安心や共感の芽になります。
登場人物の表情や動物たちの行動に自分を重ね、心が動く体験。
そんな時間は、子どもの情緒を育てるうえでとても大切です。
保育現場でも、共感を生む絵本は人とのつながりや自己理解を深める手助けになるとされています。
特に、日常の小さな出来事や気持ちの揺れを描いた物語は、安心感をもたらしますね。
ねらいを「安心・共感」に置くなら、絵のやさしさや言葉の響きが温かい作品を選ぶのがコツです。
読む人の声や表情も、子どもの心に深く届くのではないでしょうか。
言葉の力や語感を育てるねらい
絵本は、語彙力を育てる最高の教材でもあります。
まだ話し始めたばかりの子どもにも、言葉のリズムや響きはしっかり届いています。
「ふわふわ」「ころころ」といった擬音語や繰り返しの表現が多い絵本は、子どもが言葉に興味を持つきっかけになります。
読み聞かせによって、理解できる言葉の数が増え、発達の流れを自然に支えることができるのです。
ねらいを「言葉の力」に置くなら、声に出して読んで楽しい絵本や、抑揚をつけてリズムよく読める作品を選びましょう。
言葉の世界を遊ぶように味わえる時間は、親子にとって特別なものになります。
想像力・感性を伸ばすねらい
ページをめくるたびに広がる色やかたち、音や風景。
絵本は子どもの想像力を刺激する小さな宇宙です。
物語の中で、登場人物がどう感じ、どう行動するかを想像することは、心の発達にもつながります。
絵の余白や表情の変化をじっと見つめる時間も、子どもなりの“考える力”を育てる一歩です。
感性を伸ばす絵本を選ぶには、派手な展開よりも、静かな余韻を残す作品も良いでしょう。
ときには、自然や季節、動物などをテーマにしたものもおすすめです。
「このあとどうなるんだろう」と感じる物語が、子どもの想像の羽を広げます。
おとなも一緒に癒される時間にする
読み聞かせは、子どものためだけの時間ではありません。
おとなにとっても心を落ち着け、子どもの世界に入り込む大切な機会です。
仕事や家事の合間に、絵本を開いて深呼吸するような時間をもつ。
それだけで、家庭の空気がやわらかくなります。
おとなが物語に癒されると、その気持ちは声のトーンにも現れます。
それが子どもにとって、安心や愛情のサインになるのです。
ねらいを「おとなも癒される時間」にするなら、読む人自身が「好き」と感じる絵本を選ぶことがいちばん。
一緒に笑って、一緒に感じる。
そんな読書体験が、家族の絆を自然に深めていくでしょう。
“ねらい”を共有する、両親の会話
どんな絵本を読むかよりも、「どう読みたいか」を話すことが大切です。
ふたりで同じ絵本を読んでも、感じ方や印象が違うことがありますよね。
それはお互いの経験や記憶、感性が異なるからです。
だからこそ、ねらいを共有することで、読み聞かせの時間がより深い意味を持つようになります。
ここでは、両親ふたりで話し合うための小さなステップを紹介します。
自分の好きだった絵本を語り合う
まずは、自分が子どものころに好きだった絵本を思い出してみましょう。
そのとき感じた気持ちや印象を語ることで、お互いの「絵本観」が見えてきます。
たとえば、「この物語の登場人物に憧れていた」「絵の色づかいが好きだった」など、ふたりの感性が重なる部分もあるはずです。
こうした会話は、家族としての“軸”を作るきっかけにもなります。
自分の原体験を共有することは、子どもへのまなざしをそろえる第一歩ではないでしょうか。
どんな子に育ってほしいかを話す
「どんな子に育ってほしい?」という問いには、正解がありません。
けれど、ふたりで話してみると、価値観や願いの方向性が見えてきます。
たとえば、「優しい子になってほしい」「好奇心を失わないでほしい」。
その思いを絵本選びのねらいに重ねることで、作品との出会い方が変わります。
保育士さんも、子どもの成長段階や興味に合わせてねらいを設定しています。
家庭でも「今の子どもに必要なテーマ」を話し合うことが大切ですね。
ふたりの視点で選書ルールをつくる
絵本選びは、片方だけの好みになりがちです。
「どちらかが好きな作家を押しつける」ような選び方では、読み聞かせが義務になってしまうこともあります。
だからこそ、ふたりで“選書ルール”を決めておくと安心です。
「ひとりが選んだら、次はもう一方が選ぶ」「新しいジャンルを月に1冊は試す」など。
お互いの興味や関心を尊重しながら、自然にバランスを取る方法です。
こうして決めたルールは、家庭の小さな文化になります。
ふたりで考えた絵本棚ができあがると、そこにはきっと“心の温度”が並んでいるでしょう。
目的別に見る、絵本選びのヒント
ここでは、先ほどの話題に戻って、それぞれのねらいに合った絵本選びのコツを紹介します。
保育士や保育園でも参考にされている方法を、家庭向けにわかりやすくまとめました。

「安心・共感」をねらうなら
安心や共感をテーマにした絵本は、子どもの心を包み込むような温かさがあります。
たとえば、登場人物の表情が豊かで、行動に「なぜ?」と感じる余地があるもの。
そうした作品は、子どもたちが感情を整理したり、他者の立場を理解する練習になります。
具体的には『しろくまちゃんのほっとけーき』(こぐま社)や『おつきさまこんばんは』(福音館書店)のような、日常の中の小さな発見を描いた物語が効果的です。
繰り返し読むことで、子どもは安心し、言葉や表情のつながりを覚えていきます。
静かなテンポの絵本は、寝る前の読み聞かせにもぴったりですね。
「言葉の世界」を広げたいなら
語彙力や言葉への興味を育てたいときは、音やリズムの楽しい絵本を選びましょう。
言葉遊びや擬音語の多い作品は、自然に発声や発想を促します。
『もこもこもこ』(文研出版)のように、意味よりも音の感覚を楽しむ絵本は、赤ちゃんから幼児まで人気です。
また、昔話やわらべうたの絵本もおすすめです。
日本語の響きやリズムが身体に染み込み、発達に良い刺激を与えます。
ねらいを「言葉の世界」にするときは、読む人の声の抑揚やテンポも意識してみてください。
声の変化が、子どもの理解や集中を助けるのではないでしょうか。
「感性・想像力」を育てたいなら
想像力を伸ばすには、少し余白のある物語が向いています。
すべてを説明しすぎない絵本は、子どもが自分の頭の中で続きを思い描くきっかけになります。
たとえば『スイミー』(好学社)は、小さな魚が勇気を出して世界を変える物語。
そのストーリー展開や絵の世界に、子どもは自分を重ねて想像を広げます。
また、自然や季節、動物をテーマにした絵本も感性を磨く助けになりますね。
ページをめくるたびに変わる色や形、リズムを感じながら、「世界はこんなに広いんだ」と心を動かす。
そんな時間が、感性を育てる土台になるのです。
「おとなも楽しむ時間」にしたいなら
子どものために選ぶ絵本でも、おとなが「いいな」と感じることがとても大事です。
読む側が楽しんでいると、自然と声が柔らかくなり、雰囲気が穏やかになります。
絵のタッチが美しく、ストーリーに深みがある絵本は、おとなにも新しい発見をくれます。
『100万回生きたねこ』(講談社)などは、子どもには物語として、大人には人生のメッセージとして響く名作です。
一緒に読むたびに新しい感情を見つける。
それが、家族の時間を豊かにするコツではないでしょうか。
「おとなも癒される時間」というねらいを持つと、読み聞かせが日常のリセットタイムになります。
※合わせて読みたい「絵本の読み聞かせ いつから始める?」
“ねらい”を生かす読み方と関わり方
絵本は、読むだけでは終わりません。
ページを閉じたあとに残る感情や会話こそが、子どもの世界を広げる“続きの時間”になります。
おとなの言葉かけや反応の仕方ひとつで、子どもの理解や想像の深さが変わります。
ここでは、ねらいを日常の中で生かすための読み方と関わり方を見ていきましょう。
読む前にちょっとした“気持ちの準備”を
読み聞かせは、始まる前の雰囲気づくりが大切です。
おとなが急いでページを開くより、少し呼吸を整えてから始めるだけで、子どもの集中力は変わります。
照明を落とす、椅子に座る、ひざの上で抱きしめる。
それだけで「今から絵本の時間だ」と心が切り替わります。
保育園や幼稚園でも、導入の工夫として「今から読むよ」という合図やリズムを取り入れていますね。
家庭でも同じように、静かな導入が効果的です。
子どもの気持ちを読み取りながら、自然に“読む姿勢”を整えることがポイントになります。
読みながら共感のサインを出す
読み聞かせの時間は、ただ読むだけではなく“共に感じる時間”でもあります。
「悲しいね」「うれしいね」「どうなるかな」と、声に出して共感することが、子どもの理解を助けます。
また、ページをめくるタイミングを少しゆっくりにして、絵や表情をじっと見る時間をつくるのもおすすめです。
その静けさが、子どもの想像力を刺激するのです。
登場人物の感情や行動を読み取りながら、読み手自身も物語に入り込むこと。
その温度が伝わると、子どもは自然に“物語のなかの気持ち”を理解できるようになります。
読み終えた後に感想を共有する
絵本を閉じた瞬間は、心の余韻が残る時間です。
「どんなところが好きだった?」「このあとどうなると思う?」と聞いてみると、子どもの頭の中がのぞけます。
正解を求める必要はありません。
自由に話すことで、言葉の表現力や感情の整理が進みます。
保育士や先生も、子どもの発言を丁寧に受け止めることで、自己肯定感や表現力が育つといいます。
家庭でも同じです。
「そう感じたんだね」「その考えいいね」と返すだけで、会話が温かく広がります。
それが、絵本から始まる“学び”の時間になるのです。
物語を日常の会話に生かす
絵本は一度読んで終わりではなく、日常の中に息づかせることができます。
たとえば、登場人物の行動を生活の中で思い出してみる。
「スイミーみたいにがんばったね」「くまさんも待ってたね」と声をかけるだけで、物語の世界が現実とつながります。
こうした声かけは、子どもの行動理解を助け、コミュニケーションを深める働きもあります。
保育者の世界でも「絵本を活動と結びつける援助」は基本とされています。
日常の行動や感情を絵本のストーリーに重ねること。
それが“ねらいを生かす読み方”の本質なのかもしれませんね。
まとめ
絵本は、子どもを育てるための教材でありながら、おとなの心を整える時間でもあります。
ねらいを意識して選び、読んで、語り合う。
それだけで、家の空気が少しあたたかくなります。
読み聞かせは、親子の関係を深める最も自然なコミュニケーションのひとつです。
物語を通して感じる共感、驚き、安心。
その一つひとつが、子どもの感性を育て、世界を広げていきます。
肩の力を抜いて、好きな絵本を一冊テーブルに置いてみましょう。
そこから始まる時間こそ、いちばん大切な「ねらい」なのかもしれません。
※合わせて読みたい「絵本の読み聞かせ いつから始める?」



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